筆の起源は、大変に古く四千五百余年前、今の中国に於いて既に用いられていたことが、種々の史実により考察されています。
現在のような獣毛を用いて作った筆は、秦の時代、蒙恬将軍が発明したものと言われています。
日本に筆が伝来したのは、大和時代の初期で、中国文化との交流によって輸入されていたといわれています。その後嵯峨天皇の時代(八百十二年頃)に、僧空海(弘法大師)が唐に渡り筆の製法を習得され帰国し、これを民間に伝承したのが、我が国での筆造りの始まりと伝えられています。
奈良正倉院にある十八本の天平筆は紙巻き筆と称され、真書や小階字書の筆(写経用)で、その後平安時代、日本の仮名や調和体に適する独特の改良が加えられ、日本の製筆技術は進歩を遂げていった思われます。その時代の筆は、有芯筆、巻芯筆とも呼ばれ、紙で芯にする毛の根元を包み、上に別の毛を被せる製法で江戸時代末期まで珍重されました。
江戸時代末期より明治時代にかけて、中国より今の筆(水筆)の製法が伝えられ、広島の熊野を中心に急速に発展していきました。毛のまとまりと弾力を利点にとした巻筆から、墨含みよく、短期間で作れる水筆に変わっていったと思われます。今日、巻筆を作るのは当堂(攀桂堂)のみとなりその技術、その筆を次世代に伝えて行きたいと考えています。
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- 羊毛・・・中国産の山羊の毛です。羊毛は柔らかく、毛に粘りがあって墨含みが良いのが特徴。耐久性は抜群に良いです。
- 馬毛・・・胴毛、たてがみ、脚毛、尾など馬全身の毛が用いられ、部位により毛質が異なります。色も赤・白・黒と分かれます。弾力のある天尾は太筆に、胴毛は柔らかく粘りがあるので、筆の芯を巻く上毛に使われます。
- 鹿毛・・・毛質は大変弾力があり、主に筆の腰の部分に用いられます。また、毛の中が空洞になっており、大変墨含みが良いのが特徴。
- 狸毛・・・毛先が硬く、大変弾力に富む。先の効きが良いので、穂先に力をつけたい時に使われます。
- 猫毛・・・毛先に柔らかさと粘りがあり、仮名筆、面相筆に最適。
- イタチ毛・・・毛全体に弾力があるため、大変重用されています。
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号数・軸の外径 | 標準字数・用途 |
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1号(15,0mm) | 半紙1字、半切1〜2行・半切用 |
2号(14、5mm) | 半紙2字、半切2〜3行・半切用 |
3号(13、0mm) | 半紙2〜4字、半切3行・半紙用 |
4号(11,0mm) | 半紙4〜6字、半切・多字数、半紙用 |
5号(10,0mm) | 半紙6〜8字(中字)・半紙、色紙用 |
6号(8,5mm) | 半紙8〜12字(中字)・半紙、色紙用 |
7号(7,6mm) | 細字、名前書き・細字書道 |
8号(6,7mm) | 細字、名前書き・細字書道、書簡 |
名称 | 穂の長さ | 用途 |
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超長峰 | 軸の直径の6倍以上 | 近代詩文・墨象 |
長峰 | 軸の直径の4、5倍〜6倍 | 行書・草書・仮名書 |
中峰 | 軸の直径の3〜4、5倍 | 楷書・行書 |
短峰 | 軸の直径の2〜3倍 | 楷書・隷書 |
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筆の四徳と呼ばれる「尖」、「斉」、「円」、「健」の4つを見て選びます。 「尖」とは、穂先の部分がとがっていること。書いていて、まとまりがあるのが大切で、特に細筆はこれが決めて。 「斉」とは、穂先全体が整っていること。多くの原料が一本の筆となるためにバランスよく配偶されていること。 「円」とは、穂全体がきちっとした円錐形になっていること。墨を入れた時穂全体がふっくらして、不均等なふくらみやねじれが起きないこと。 「健」とは、穂先の腰の弾力がほどよく、筆運びがスムーズであること。 穂が糊で固められた筆から捌かれた筆までありますが、穂先から軸までよく御覧になって欠点のないものを選ぶのが大切です。 それ以外にも、筆の大小(太筆・中筆・細筆)、穂の長短(長峰・短峰)、穂の柔剛、用途による穂先の形、原料など種類が多く、その中からお客様の意にかなった筆をお選び下さい。
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1. 中筆、太筆の場合 使用後は、穂についている墨を手でもむように水洗いします。特に根元に付いている墨をよく洗い落とす事が大切で、これが十分でないと根元に墨溜まりができ、ここから墨が腐ったり、毛が切れる原因になります。保管される際は、風通しのいい場所で吊るして乾燥させるのが最適です。 |
2. 細筆の場合 墨の含んだ所まで水に浸し、スポンジなどに水を含ませたもので少しずつ墨を拭き取っていきます。このやり方は墨が少し残ってしまいますが、先の効きを生かすために、筆の形を崩さないようにするためです。 |
3. 備考
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